札幌 納骨堂 札幌市中央区 貸し室 納骨堂/クリプト北光
日本基督教団 札幌北光教会 日曜礼拝 木曜礼拝 牧師/指方信平、指方愛子



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■使命
人は、この世界に生まれてきた環境の中で、いくつもの条件や課題に直面しながら、自分を模索します。その一度きりの人生の中で、自分という者の存在意義を問い、自らの用い方を考え、ただ惰性によってではなく、生き甲斐をもって過ごしたいと願っていることでしょう。そこである人は、命の創造主である神を信じ、神からの賜物として人生を受け止めます。そして自分に求められている生き方を選び取って神に応えていこうと希望します。ある人は、今まさに従事している働き、直面している課題にこそ神の必然と導きを信じ、これを自らの使命として懸命に取り組むことによって神に応えようとします。
洗礼者ヨハネとその両親ザカリアとエリサベト、この人々もまた、神と向き合う日々の中で、自分に託された使命を見出し、これを担って死んでいった人々です。ルカ福音書は、彼らを物語ることを通し、すべての人間の命と人生が、単なる偶然ではなく、神の意志に基づいて世に送り出されたものであることを示しています。
■ザカリアの戸惑い
ザカリアとエリサベト。二人とも祭司の家系に育ち、律法を守ることにおいて正しい人でした。ザカリアは、後継となる子がなくとも、祭司という自分に定められた使命を全うしたという誇りと充足感を持ち、世を去るべきその時を待っていたことでしょう。そんな自分たち年老いた夫婦の歩みに、あのアブラハムとサラが体験したような出来事が訪れるとは露ほども思っていなかったのです。
自分に当てられた神聖での厳かなその務めの最中、ガブリエルと名乗る天からの使いが現れ、ザカリアに妻エリサベトの妊娠とヨハネの誕生を予告しました。また、天の使いは、やがて生まれてくるヨハネが担うべき使命についても告げ知らせました。生まれてくるその子には、イスラエルの救いのために、その準備を整えるという重大な役目があると言うのです。ザカリアは答えます。「何によって、わたしはそれを知ることができるでしょうか」。無理からぬことです。彼は、もう人生のエンディング、総決算に向かっていたのです。それがまさか、これから負うべき使命がある、そのために神があなたたち夫婦を用いるのだなどと途方もない話をされても…。ザカリアの心は、疑いと戸惑いでひどく描き回されました。
■黙する
それ以降、ザカリアの口は閉じられました。ショックのあまり彼が言葉を失ったということではありません。ルカ福音書は、天使の言葉としてこう記しています。「あなたは口が利けなくなり、この事の起こる日まで話すことができなくなる。時が来れば実現するわたしの言葉を信じなかったからである」。これは、ザカリアが天使の言葉を疑い、口答えしたことに対し、「これは神の意志であり、お前に有無を唱える権利はないのだ、ただ黙って妻エリサベトにおいて現わされる神の業を刮目せよ」と一方的に要求しているような言葉であり、天使によって自由を奪われるという受け身的で消極的な描写です。しかし、ここであえて「天使」という超自然的な存在を持ち出さずに、ザカリア自身の内面における主体的な態度、すなわち信仰を読み取りたいと思うのです。ここでザカリアは、自分の経験や知識という尺度で物事を計ることを捨て、神の前に黙し、沈潜し、自分の人生における神から託された使命を静かに深く受け止めていったのです。「黙して待つ」。それはただ受け身だけの消極的態度ということではありません。様々な人間の言葉・思惑が溢れ返る騒がしい世にあって、自らとこの世を深く見つめ、なおそこに神の働き、導きを信仰のまなざしで見極め、聞き分け、神の支配の中に、自らを従わせていくことです。
■「最大遺物」
私たちもまた、ザカリアやエリサベト、ヨハネと同じく、神の意志によってこの世界に生み出され、それぞれの日々の中で(若き日にも、老いの日にも)、自分の使命というもの見出してこれを精一杯担うべく生かされているのだということを見つめたいと思います。神の意志が、いつどのように実現されるのか、それが私たちの生きている間に現わされるのか、あるいは世を去った後、次の世代に現わされるのかは分からなくとも、今日、私たちに語られる主の言葉、今日、わたしを用いようとされる主の業のあることを静かに見つめ、信頼をもって受け止めていくことが求められています。ザカリアとエリサベトは、イエス・キリストの宣教の業、その十字架も復活に示された救いをその目で見ぬまま世を去ったのです。しかし、その御業が表されるため、確かに彼らが用いられたように、私たちもまた神の業の備えとして用いられることでしょう。
「あの人は、主の愛を信じ、主の言葉を聴き、主の愛に応えて一生懸命生きた人だ」、その信仰の姿を遺していくことができたならば、いかに幸いなことでしょうか。
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