札幌 納骨堂 札幌市中央区 貸し会議室 納骨堂/クリプト北光
日本基督教団 札幌北光教会 日曜礼拝 木曜礼拝 牧師/指方信平、指方愛子
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■命の交わりの食卓
「過越祭の6日前」という日付は、イエスの死のカウントダウンが始まったことを意味しています。エルサレムでは、祭司長たちやファリサイ派の人々によってイエスは指名手配されていました。そんな危険な状況下にも関わらず、イエスは再びマルタとマリア、そしてラザロの家があるエルサレム近郊のベタニア村に行きました。迎え入れられた夕食の席にはあのラザロがいました。病の末に死んで墓に葬られていたラザロが、いま以前と同じようにイエスと食事の時を共にしている。甦ったラザロとこれから死にゆこうとされるイエス、二人のこの交わり、命のつながりを何ものも引き裂くことはできません。ラザロの中にイエスの命が息づき、イエスの中にラザロの死が包まれているのです。ラザロはこの時の光景を生涯記憶し続けたことでしょう。そして、その記憶は、今日私たちにも受け継がれています。私たちもまた主イエスとの命の交わりを、礼拝(聖餐)の中で、自分自身の出来事として確かめているのです。
■一滴も無駄にせず
その時、マリアが、高価なナルドの香油をイエスの足に塗り、自分の髪で拭うという驚くべき行動にでました。それは亡くなった人を葬る時に体に塗ったり、皮膚病であれば薬として患部に塗ったり、あるいは大事な来賓客を迎える時に塗ったり、そういう特別な時のための高価な香油です。彼女はキャップ一杯きっちり量るようにしてではなく、惜しげなく、すべて捧げたのでしょう。計算づくの中途半端な行為ではありません。イエスへの自分の愛、感謝、敬意、信頼、望み、その心のすべてを注ぎ出すようにして捧げたのです。イエスは、彼女のこの行為を、これから死にゆく自分のための葬りの業として受け止め、彼女のするままにさせました。
イスカリオテのユダはこれに否定的な反応を示しました。もっと有意義な使い方があったはずで、これは極めて無駄遣いだと。もっともらしい意見なのです。私たちも時に自分の価値観で他者の意見や行動を斜めに見、正論を振りかざすことがあるかもしれません。反対に自分自身がそうした言葉に振り回され、縛られ、妨げられてしまうことがあるのです。しかし、そうして結局は、主に対する真心からの感謝や信頼や愛を表していく機会を逸してしまうのです。6節「彼がこう言ったのは、貧しい人々を心にかけていたからではない。彼は盗人であって、金入れを預かっていながら、その中身をごまかしていたからである」。ここで批判されるユダとは誰なのか、読者であるわたし自身のありようが問われているのではないでしょうか。わたしたちもまた主から預かった賜物を、まるで何も持っていないかのようにごまかして扱ってしまっていないか?と。ここでイエスは、誰がなんといおうと、マリアが今自分の持てる最善を捧げたその行為、その愛、感謝、信頼、望みを、一滴も無駄にせず大切に受け止めてくださったのでした。
■主に仕える
ヨハネ福音書には、5千人の供食の物語で一人の少年がパンと魚を差し出した時、弟子たちはこんなわずかなものが何の役に立つと否定しましたが、イエスはこれ受け止め、そして神の栄光が現わされました。あるいは、自分がイエスに従う者であることを隠していたアリマタヤのヨセフが、イエスの死という局面に至って姿を現し、自分の入るはずだった墓にイエスを納めたことを通して、復活の出来事が現わされました。それぞれの「奉仕」を通し、主はそれを一つも無駄とせずに受け止め、ご自身の栄光を現わされるのです。わたしたちにとって最も身近なところでいえば、毎週の礼拝奉仕も食堂奉仕も(以前は「当番」と呼んでいましたが)、その業の大小という人間の量りには拠らず、主はそれぞれの思いと業とを大切に受け止めてくださり、そうしてわたしたち教会をご自身の栄光を表す器として用いられるのです。なによりもまず、この礼拝こそが、主に対する私たちの主への信頼と感謝と望みと愛とを注ぎ出していく献身と奉仕、「ナルドの香油」なのです。
「わたしたちが神を愛したのではなく、神がわたしたちを愛して、わたしたちの罪を償ういけにえとして、御子をお遣わしになりました」(ヨハネの手紙T 4:10)。「わたしが神を愛したのではなく、まず神が私を愛してくださった」。周りの人がそんなことは無駄だと言おうとも、自分は無関係ではいられないと思って捧げ尽くしたマリアの愛を思う時、それは実に、独り子を世に与えたもうた、独り子と共にすべてを捧げ尽くされた神の愛を映し出しています。今日から、教会の暦は降誕前節です。礼拝も、教会やそれぞれの生活の場での奉仕も、その一つ一つが主の愛を原動力とし、主の愛を映し出していくものとされることを求めていきたいと願います。
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