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ニコデモという人は、ユダヤ教の一派であるパリサイ派に属していた人でした。聖書に精通している、社会的地位も高い人でした。立場上からか、人目を避けるように夜に主イエスの元へと訪ねてきました。聖書の知識はたくさんあるけれども、主イエスが語り行っていることを本当に理解してはいなかったようです。夜、という暗さは、ニコデモの本当の救いとは何か、という問いの答えが分からない状態を示しているようでもあります。

ニコデモは律法に忠実だったことでしょう。しかし、その律法を守れば守るほど、できないこと、守れないことが出てきたでしょうし、そういう守るか、守れないかという比較の中で生きる息苦しさのようなものもあったかもしれません。律法を守ることによって、自分自身の罪の自覚はできても、本当の意味での救いがなかったのではないでしょうか。そしてそこには「私が」律法を守っている、と、やったことは自分の力であると、自分の力で救いを得ようとする人間の傲慢さが浮き彫りにされています。それに対して主イエスは、ニコデモに生き方の転換を示します。

主イエスは、神の国を見るためには、新しく生まれなければならない。自分の望むようなしるしを求め、それによって、自分なりに信じていても、神の国を見ることにはならないのだと。人間がその根底から変えられることなしに、神の国は見ることができないし、救いはない、「水と霊とによって生まれなければ、神の国に入ることはできない。」と言われます。

水と霊、それは、洗礼ということを表しています。水が象徴的に用いられる洗礼は、単に水だけによる儀式ではなく、また人間側の決心、決意にとどまるものではなく、聖霊の働きによって神のみ業が行われる出来事です。密かに主イエスに敬服し、主イエスを信頼するとしても、それだけでは本質的には何も変わらないのです。主イエスは、密かに信じる者から、公然と信仰を告白し、水と霊とによるいのちが与えられるようにとニコデモを招くのです。

主イエスは続いて14節で、モーセが荒れ野で蛇を上げたように、人の子も上げられねばならない。それは信じる者が皆、人の子によって永遠の命を得るためである。と言われています。これは、民数記21章4節〜9節に書かれてある通りで、悔い改めるイスラエル民に対して神様が与えられた青銅の蛇でした。それによってイスラエルの民は命を得た、とあります。主イエスは、ここで、蛇の旗竿によって命が与えられたように、主イエスの十字架を示しています。

主イエスは、神の愛とは何かを示すために、この地上に来られました。それは言葉だけでなく、実際に迫害を受けながらも、病人を癒し、貧しい人と共に生き、罪人と言われていた人たちと共に食し、神は本当にあなたと共にいる、神の愛とは果てしなく深く広いものなのだということを身をもって示されました。そして最後には人々の、私たちの罪を背負って十字架にかかってくださった。そして死を超えて復活なさった。そのことを信じるか。ということです。自分の力で律法を遵守してきたニコデモにとって、理解するには大変なことだったかもしれません。自分の力で何とかしようとするものでなく、信じるだけで永遠の命を受けることができる、それはこれまでにない価値観だったかもしれません。

信じるというのは、とても難しいことです。信じるとは、自分の弱さを認め、それも含めて、自分のすべてを明け渡し、神にゆだねていくことだからです。

しかし、主イエスは、その「信じる」ということさえも神のめぐみによって信じることができる、水と霊とによって生まれ変われることができるのだと告げてくださっているのです。

夜の訪問者ニコデモは、19章39節、主イエスが十字架で死なれた後、その遺体を葬るために没薬と沈香を混ぜたものを持って登場します。そこには、周りから見られないように夜に身を隠して主イエスに会いに来たときとは違い、主イエスを私のキリストであると告白する者として、密かに信じる者から公然と信仰を告白するものとして、記されています。ヨハネによる福音書1章では、暗闇と光について語られていますが、まさにニコデモは、夜の暗闇からキリストの光の中を歩む者として変えられました。

主イエスは、神様の忍耐と憐みによって「水と霊とによって生まれる」ことの恵みが与えられていること、そして主イエスの十字架の死と復活によって、決して暗闇ではなく、光の中を歩むことができるようにと、永遠の命が与えられていることを示されました。私たちはキリストにある、聖霊による救いの恵みに感謝し、そのことをしっかりと信じ、恵に応えていくものでありたいと思います。

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