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日本基督教団 札幌北光教会 日曜礼拝 木曜礼拝 牧師/指方信平、指方愛子

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今日の聖書の箇所。主イエスの父ヨセフと母マリアは、家族で過越祭のためにエルサレムへ旅をしました。その帰り道、12歳の少年イエスが3日間も、失踪したという事件です。1日分の道のりを旅するまで両親も気がついていなかったというのですから、事情があるにせよ、さぞ驚いたことでしょう。

しかしそこには意味がありました。ユダヤ人の少年は数えの13歳で「バル・ミツバ」という成人式を迎えました。少年イエスは、恐らく、そのためにエルサレムに残り神殿にいたのではないかと考えられます。「バル・ミツバ」とは、ユダヤ教の学者たちと問答をして、律法を暗唱し、朗読をしなければなりませんでした。個人だけではなく、共同体にとっても、重要な式で、「バル・ミツバ」を終えたユダヤ人男の子は、成人男性のひとりとして数えられるようになります。礼拝は、成人男性が10人以上いないと礼拝が成立しないという規則がありました。両親からすれば、大変な問題です。親類や知人の間を探し回り、エルサレムに引き返したとき、母マリアが「イエスが神殿の境内で学者たちの真ん中に座り、話を聞いたり質問したりしておられるのを見つけた」とあります。少年イエスの受答えは、あまりにも凄いので、ずっと問答をし続けていたのでしょう。

母マリアが、少年イエスを見つけたとき、イエス少年が謝るかというと、「どうしてわたしを捜したのですか」と言います。そして「わたしが自分の父の家にいるのは当たり前だということを、知らなったのですか」。

両親にはこの言葉の意味が分かりませんでしたが、母マリアは、忘れ去るのではなく、「これらのことをすべて心に納めていた」というのです。

主イエスは自分のユダヤ人の青年としてのアイデンティティは何かを、問答を通して確認したのではないかと私は考えます。「アイデンティティ」というのは、心理学・社会学の用語で、簡単に言うと「自分が自分であること」「自分が何ものであるか」ということです。

主イエスは、自分の本当の父は神であって、自分はまさしくその子供である。だから神殿こそが自分の本当の家だと、ある意味深く深く理解した。若者が大人になった、自分の「アイデンティティ」を発見したといえる大切なことではないかと思います。
「自分が自分であること」の揺らぎ、アイデンティティの課題というのは、主に青年期に持つものだと、私は、ぼんやりと捉えておりましたが、私自身の経験から、どの年代になっても、結婚、子育て、病気、退職、喪失、死別、身体の衰え、さまざまな人生の転機を迎えたときにも、課題になるものだということを改めて考えさせられています。

この北光教会でも、いつも穏やかに写真を撮って下さっていた方、人生の信仰の大先輩でありながら、私の言葉に静かに謙虚に耳を傾けて下さっていた教会員の方々、直接お会いしたことは無くても、さまざまな形で教会を支えて来られた方が逝去されたと聞いております。淋しさ、悲しみ、喪失感、を覚えているのは、私だけではないでしょう。

淋しい。どこに行っても、もう会えない。自分のアイデンティティが、パタパタと剥がれ落ちていくような危機です。それぞれに、そんな気持ちを抱えている方がいらっしゃるかも知れません。

でも、こうやってもう会えない誰かを探している私に対して、私の恩師ならば、きっとこう言うと思います。
「なぜ、私を探しているのですか。私が父の元にいることをまだ分からないのですか」

少年イエスは、私たちはやがて父の元に帰るということ。新たな家族の世界を私たちに教えてくれています。私たちは様々な家族、人生を背負って生きなければならなりません。しかし、その根本には主イエスが神さまの元にいて、そこに私たち全員が繋がっているのです。

だから、与えられた生命を時間を潰すのではなく、精一杯、使って生きていく使命が与えられています。神さまから与えられる恵みといつくしみの中で、私たちは歩んでいるということを忘れてはなりません。
主イエスは人間の愚かさ、罪を背負って、十字架にかかりました。失望の中、弱さに恥じ入る思いで過ごしていた弟子達の間に3日目に復活をされ、現れました。それは、死をも超えた神の愛を示されたのです。

どれ程、時代が変わっても、月日が流れても、どれほど季節がめぐり来ても、永遠に変わらない神の恵みといつくしみが私たちにはあるのです。その恵みといつくしみの中を、共に歩みだしましょう。 Ω

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